2016年4月20日
株式会社神戸製鋼所
株式会社JEOL RESONANCE
当社、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)、国立研究開発法人理化学研究所(理研)、(株)JEOL RESONANCE(日本電子(株)の子会社)の4社は、2015年7月に開発完了済みの「デュエルビッツ 入金不要ボーナス※1(1020MHz)」が文部科学省主催の平成28年度文部科学大臣表彰において「科学技術賞」を受賞しました。本日、文部科学省にて表彰式が執り行われました。
文部科学省では、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的とする科学技術分野の文部科学大臣表彰を定めています。その中で下記、各表彰に分かれています。
NMR装置は、発生させる磁場が強磁場である程より速く正確な分析が可能となります。従来の最高磁場は2009年開発のドイツ製1000MHzでした。使用された中心部品であるNMR磁石※2は、ニオブチタン(NbTi)やニオブ3スズ(Nb3Sn)などの金属系超電導体で作った線材を多層コイル構造に巻いて作られていました。しかし、これらの金属系超電導体では理論上1000MHzの磁場の発生が限界とされており、これを越えるには金属系超電導体に代えて、セラミックス系の高温超電導体を用いる事が唯一の解決策である事が1980年代より分かっており、既に電導体が発見されていましたが、セラミック系は割れやすい、線材の継ぎ目の接続技術が無いなど様々な技術的な課題からNMR磁石への応用はこれまで実現していませんでした。
その様な中、当研究チームは下記3点の新たな技術開発により、セラミックス系高温超電導体を用いたNMR磁石の開発に成功し、世界最高磁場となる1020MHzを達成しました。
厚み約5mmで総延長3kmのセラミックス系高温超電導線材を、直径約10cm、長さ約1mのコイル状に巻く特殊な巻線技術の開発。
磁場の変動を抑えるため、安定度の高い電源と磁場安定化装置の開発。
不均一な磁場を補正して均一にする為に磁場補正装置の開発。
今回、世界で初めてセラミックス系超高温超電導線材の使用に成功し1000MHzを突破した事で、今後、研究が進むと1200MHz、更には1500MHz達成も不可能では無いと言われています。その様な事から、今回の1020MHz達成は更なる高磁場への扉を開け、新たなステージに進んだと考えられます。
今回の開発により、今後応用が期待される分野としては、主に以下が挙げられます。
タンパク質の構造・機能の更なる詳細な解明が可能となり、医薬品開発が進展。
従来、測定が困難であった無機物を中心とした材料開発に寄与。
リチウムイオン電池の分野では、リチウム原子核の直接観測が可能になる事による電池性能の向上。
当研究チームは、NMR装置の高磁場化による更なる分析能力の向上を目指し、今後も研究開発を進めて参ります。
※1:NMR装置(nuclear magnetic resonance)
物質へ磁場をかけ、発生した原子核の磁気的エネルギーを精密に測定する事により、分子構造を調べる事が可能な装置です。磁場が高い程感度が高くなり、従来は困難であった複雑な構造の解析することが可能です。具体的な使用例は、人体内部の疾患や組織の状態を解析する為に使用されるMRIや水素の比率の差異を分析する事が可能なため、食品の産地証明や化学薬品の中にある分子の特定・分析等があります。
※2:NMR磁石
NMR装置における中心部分です。超電導線を多層巻きにしたコイルに電流を通し、中心位置に強磁場を発生させるための装置です。他の磁石と比較し、磁場の安定度と均一度に優れます。
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