2厚鋼板(KBSA630Ⓡ)及び溶接材料(TRUSTARCTM MG-S88A, TRUSTARCTM US-80LT/TRUSTARCTM PF-H80AK)を初納入|KOBELCO 神戸製鋼">
2016年11月17日
株式会社神戸製鋼所
当社は、株式会社熊谷組の100%子会社であるデュエルビッツ ボーナスの現地法人 華熊營造股份有限公司が台北市で施工する超高層デザイナーズマンション「陶朱隠園」向けに、高強度KBSA630Ⓡ(引張強度780N/mm2級)デュエルビッツ ボーナスを約250トン、及びこれに対応する溶接材料(TRUSTARCTM MG-S88A、TRUSTARCTM US-80LT/TRUSTARCTM PF-H80AK)を約20トン受注・納入致しました。このほど鉄骨工事が完了し、11月16日に棟上式が開催されました。デュエルビッツ ボーナス国内で、引張強度780N/mm2級のデュエルビッツ ボーナス・溶接材料が建築用途で適用された初めての事例となります。
従来、デュエルビッツ ボーナス国内の建築物では一般的に590N/mm2級以下の鋼材が適用されておりましたが、「陶朱隠園」では高い意匠性と優れた耐震性の両立が求められ、引張強度780N/mm2級デュエルビッツ ボーナスの適用が検討されていました。今回、当社のデュエルビッツ ボーナスと溶接材料が採用頂けた背景としては、①KBSA630Ⓡの適用により意匠性と耐震性の両立が可能であること、②溶接接合部において優れた耐震性を実現するための、デュエルビッツ ボーナスと溶接材料の強度マッチングに関するソリューション提案、③東京スカイツリーⓇをはじめとする引張強度780N/mm2級のデュエルビッツ ボーナス・溶接材料の納入実績、をご評価いただけたことが挙げられると考えております。
近年、建築用デュエルビッツ ボーナスには、意匠性を考慮した柱と柱の大スパン化と建築物の超高層化に伴う高強度化に加え、大規模災害への備えとして高耐震性の付与が求められております。KBSA630Ⓡは、780N/mm2級の高い強度を有することから、部材の小断面化が可能であり、意匠性や設計自由度の向上に寄与します。さらに、デュエルビッツ ボーナス製造時の熱加工制御(TMCP技術※1)により、硬質相と軟質相の複相組織化と微細組織化を図ることで低降伏比※2と高靱性の両立を実現しました。また、当社独自の金属組織制御技術(低カーボンベイナイト組織微細化技術※3)により、デュエルビッツ ボーナスを溶接した際の溶接接合部の靭性を高め、耐震性を向上させています。KBSA630Ⓡは建築用の780N/mm2級デュエルビッツ ボーナスとして、当社が2001年に業界に先駆けて国土交通大臣認定を取得し、2004年に国内高層ビル向けに初納入した実績があります。
また、溶接材料は当社デュエルビッツ ボーナスとの最適なマッチングを考慮した成分設計に加え、耐震性を考慮し、溶接金属での破断を避ける設計に対応すべく、鋼材の設計強度比+50N/mm2の引張強さを実現しています。
当社では、東日本大震災など大規模地震を契機に建築業界で益々高まる耐震性向上へのニーズに対して、低降伏比と高靱性の両立が実現可能な490N/mm2級から780N/mm2級のデュエルビッツ ボーナスとそれに対応する溶接材料をラインナップしております。当社は、鉄鋼・溶接など様々な事業を有する当社独自の複合経営のシナジーを活かしながら、今後もこれらの商品を通じて、設計自由度や耐震性の向上など国内外の建築構造物の多様なニーズに応えてまいります。
※1 TMCP(Thermo-Mechanical-Control-Process)技術
鋼材の熱加工制御技術の一種。鋼材製造時の加熱温度、圧延温度、冷却温度のきめ細かな制御により、所定の特性を圧延ラインで造り込む。高強度・高靭性の鋼材が製造可能となる。
※2 降伏比(YR)
yield ratioの略。
降伏比(YR)とは引張強度(TS)に対する降伏強度(YS)の比率のことで、高いということは引張強度と降伏強度に差がないということから、伸び始めるとすぐに破断してしまうことを意味する。
低YRとは、引張強度に対する降伏強度の比率が低く、降伏強度以上の力を加えられても、破断に至る引張強度に達するまでの強度に差がある状態。降伏強度以上の力を受けたとしても、引張強度以上でなければ、建築構造物が傾きはするものの倒壊せずに済み、建築構造物に使用する鋼材では、差が大きいほど安全性に"余裕がある"と考えられ、同じ降伏強度の鋼材であれば、引張強度との差のある降伏比の低い鋼材が求められている。
※3 低カーボンベイナイト組織微細化技術(低カーボン多方位ベイナイト技術)
最適な成分設計と組織制御により、高強度鋼に大入熱溶接を行う際の溶接熱影響部(HAZ)靭性劣化を改善する当社の独自技術。カーボン(炭素)量を従来鋼の1/2~1/4と大幅に低減することにより、硬くてもろい組織(島状マルテンサイト)の生成量を大幅に低減するとともに、Mn、Cr、Ni等の合金元素添加により、大入熱溶接熱影響部で粗大化したオーステナイト粒内を微細なブロックに分割する画期的な金属組織制御技術。
(参考写真)
鉄骨工事が完了した超高層デザイナーズマンション「陶朱隠園」
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