デュエルビッツ vip

2007年9月27日

株式会社神戸製鋼所

当社は、PVD（Physical Vapor Deposition＝物理的蒸着）装置を使ったデュエルビッツ vip（以下、PVDコーティング）の受託加工事業において、需要が増大している日・米2拠点で受託加工体制を構築しました。2010年までに、同事業における売上高を、年間20億円規模に拡大する計画です。

北米市場をターゲットとした新拠点「KOBELCO Advanced Coating(America),Inc.」は、日系企業が多く進出しているシカゴ近郊イリノイ州バファローグローブ市にこのほど設立し、主に工具、金型メーカーなどを対象に10月1日より営業を開始します。また、国内では、本年4月に設立した「高砂コーティングセンター」（兵庫県高砂市、高砂製作所内）にて、工具、金型、機械・自動車部品メーカーなどからの受託加工需要に対応していきます。

PVDコーティングは、工具、金型、機械・自動車の摺動部品等の寿命（耐磨耗性・耐久性）を、未処理品に比べて2倍〜10倍程度向上できる表面加工技術です。対象となる受託加工市場は、技術の適用分野の拡大、対象部品数量の増加を背景に、これまで年率10％以上の伸び率で成長してきました。特に、自動車関連分野では、燃費向上を目的としたエンジン周辺部品への適用に期待が高まっており、高温での耐酸化性に優れた硬質膜や、低摩擦係数を特徴としたDLC（ダイヤモンド・ライク・カーボン）（※注1）膜の実用化が活発に進められています。また、製造業において環境問題への対応が喫緊の課題となっている中、従来の表面処理工程で利用されてきた湿式めっきと比べて廃液がでないなどの利点があり、PVDコーティングに注目が集まっています。こうしたことからもPVDコーティングの適用は、今後も自動車関連分野などを中心に更に進むものと考えられています。

当社は、1986年からPVDの一種であるAIP（Arc Ion Plating）（※注2）方式による皮膜形成装置の製造販売を開始し、1998年には独自開発したスパッタリング方式のUBMS（Unbalanced Magnetron Sputter）（※注3）装置をメニューに加え、累計300台以上の納入実績をもつPVD装置の国内最大手メーカーです。2000年からは、独自開発膜のDLCコーティングを中心に、国内向けの受託加工事業も展開してきました。当社は、グループ会社も含めて、PVD装置そのものの開発から、新膜の研究開発、解析、更には部品の加工に最適な金型素材の提案・供給に至るまで一貫して手がけており、世界で唯一、ＰＶＤコーティングのトータルソリューションが提供できる企業です。
今後も、装置・新膜の研究開発に注力するとともに、PVD技術の適用分野拡大に貢献しつつ、既存の受託業者との共存共栄をはかりたいと考えています。

＜北米拠点の概要＞

会社名	：　KOBELCO Advanced Coating(America),Inc.（略称 KOBAC）
所在地	：　北米イリノイ州バファローグローブ市
営業開始	：　2007年10月1日
資本金	：　US,000,000.
代表者	：　高原一樹
事業内容	：　PVD受託加工
主な設備	：　AIP装置、洗浄装置、検査装置

＜高砂コーティングセンターの概要＞

代表者	：　河口博
所在地	：　兵庫県高砂市（神戸製鋼所高砂製作所内）
設立日	：　2007年4月1日
主な設備	：　AIP装置、UBMS装置、洗浄装置、ラジカル窒化炉、検査装置

＜語句説明＞
注1）DLC（ダイヤモンド・ライク・カーボン）コーティング
DLCはダイヤモンドとグラファイトの特性を兼ね備えた皮膜で硬度が高くかつ摺動特性に優れた皮膜です。その特性を活かし、自動車のエンジン部品摺動部や各種機械部品へのコーティングが実用化されています。また、他の皮膜に比べ耐凝着性に優れ、アルミや銅など非鉄金属の加工用工具や金型にもDLCのコーティングがなされています。その他にも、可視光や赤外線に対する透過性、電気抵抗の制御性といった多くの特徴を持つことから、電子機器や光学部品までの幅広い分野での利用が期待されている膜です。

注2）AIP（アーク・イオン・プレーティング）装置
真空アーク放電を利用して、固体蒸発源材料を瞬間的に蒸気化・イオン化し、これを基板上に堆積して皮膜を形成します。本装置によるAIPコーティングは、TiAlN（チタンアルミナイトライド）などに代表される合金系皮膜の成膜に優れており、また高成膜レートのため、高い生産性を誇り、対象物として工具・金型・自動車部品など幅広い分野で利用されています。

注3）UBMS（アンバランスド・マグネトロン・スパッタ）装置
グロー放電によりアルゴンイオンを生成し、そのアルゴンイオンを利用して固体蒸発源材料から原子を叩き出し、基板上にその原子を堆積して皮膜を形成しますが、蒸発源に取り付けている磁石の磁力を意図的に変え、非平衡な磁場を作り出し、基板近傍のプラズマ密度を上げてイオンアシスト効果を増大することによって、皮膜の特性を制御できるのが特徴です。本装置によるDLCコーティングは、皮膜の密着力が高く、また、皮膜硬度の制御が可能であり、さらに、金属を同時にスパッタすることで金属を含有したDLCや、膜中の水素含有量を制御したDLCなど多様な成膜が容易に行えるため、幅広い顧客ニーズに対応できます。