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プレスリリース

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  • デュエルビッツ 出金
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デュエルビッツ 出金いて

〜優れた溶接性と熱処理後の高強度・高靭性を両立した安全性の高い鋼板を実現〜

2008年2月20日

株式会社神戸製鋼所

当社は業界で初めて、優れた溶接性を確保する一方で、タンク成形後に長時間の(*1)熱処理(=溶接後応力除去焼鈍「PWHT」)を施工した後でも、高強度・高靭性を実現する(*2)(*3)「デュエルビッツ 出金」を開発し、販売を開始しました。受注第1弾として、大手タンクファブのトーヨーカネツ株式会社殿から約2,500トンの初受注を獲得し、このほど納入を完了しました。

近年、世界的なエネルギー需要の増大を背景として、ブタンやプロピレン等の化学製品を貯蔵するデュエルビッツ 出金の建設基数が急増しています。また、貯蔵効率や経済性の観点から、タンク1基あたりの大型化・高圧化が進んでおり、これに伴い、必要とされる鋼板も厚肉化しています。具体的には、これまで主流であった板厚38mm以下の鋼板から板厚70mmを超えるような厚肉鋼板が要求されるようになってきました。

デュエルビッツ 出金の製作工程では、タンクの安全性を確保するため、溶接部に発生する残留応力を緩和する応力除去焼鈍(PWHT)が行われています。鋼板の厚肉化および現地施工化による溶接補修回数増加に伴い、PWHT時間は、従来の8時間程度から20時間程度に長時間化する場合があります。
一方、鋼材の特性として、(*4)PWHTが長時間化すると、一般に炭化物の凝集や粗大化を伴うミクロ組織の変化により、強度や靭性が低下します。これを防ぐためには、Mo,Ni,Cu,Cr等の高価な合金元素を多量に添加する必要があり、結果として溶接性が劣化するという問題がありました。
今回開発した鋼板は、PWHTにおける強度低下を極小化する“合金元素の最適添加による強度低下抑制技術”や低温においても高い靱性を安定的に確保できる“高純度鋼の製造技術”等を組み合わせることにより、これまで両立が難しいとされてきた長時間PWHT後における「高い強度」、「良好な靭性」、(*5)「溶接施工のしやすさ」を実現しました。 その結果、従来困難であった最大板厚72mmの鋼板に20時間のPWHTを行う場合においても、良好な特性を具備しており、需要家より高い評価を得ております。また、長時間のPWHTが不要な場合においても、本鋼板は従来よりも高強度、高靭性を確保できるため、タンクの安全性向上に寄与することが期待されます。

本鋼板の特性が評価され、大手タンクファブのトーヨーカネツ株式会社殿から、2,500トンを初受注し、本年1月に全量の納入を完了しました。
また、現在も、引き合いを頂くなど需要家の関心も高く、今後ともデュエルビッツ 出金の安全性向上を通して社会や環境への貢献を図っていく考えです。
<参考
(*1)溶接後応力除去焼鈍(PWHT)
PWHTとは‘POST WELD HEAT TREATMENT’の略。溶接部には残留応力が発生し、降伏応力を超える場合があり、これを低減させるために焼鈍が必要となる。PWHTは、溶接構造物を昇温して溶接部にクリープ変形を生じさせることにより、溶接残留応力の原因となっている固有歪を低減させ、溶接後に残存する残留応力を低減する目的で実施する。

(*2)タンクの分類
エネルギータンクの分類としては、(1)常温で石油等の液体を貯槽する円筒タンク、(2)低温で液化天然ガス等を貯槽する低温タンク、(3)0.5Ma程度の圧力をかけてブタンやプロピレン等の液体を貯槽する球形タンクがある。タンクの溶接は、一般に、縦向き、横向きの被覆アーク溶接で施行されている。
写真1 円筒タンク 写真2 低温タンク 写真3 球形タンク

(*3)550MPa級鋼板
降伏応力が415MPa、引張応力が550MPaの鋼板。ASTM規格のA537(圧力容器用C-Si-Mn熱処理鋼板規格)がタンク用鋼板として広く使用されている。

(*4)PWHTの長時間化
鋼板の厚肉化:板厚が厚くなると残留応力が大きくなり、また、熱処理時に温度が上がりにくいため、PWHT時間は長くなる。
また、板厚>38mmのタンクについては溶接施工後、タンク全体でPWHT処理することが求められている。タンク全体でのPWHTは部位によって昇降温スピードや最高到達温度が異なるため、PWHT時間を長めに設定する必要がある。
石油メジャー系のプラントでは、コスト削減のため現地ファブ(主に石油産油国)が指定されるケースが増加しており、現地の溶接技術と安全性の観点から、ルール以外の自主基準でPWHT処理の時間や回数を増やす傾向にある。

(*5)本鋼板の溶接性
化学成分を最適化することにより、溶接前の予熱は、従来鋼では割れが発生していた50℃で対応が可能であり、溶接施工性が大きく向上した。